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『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル監督インタビュー

INTERVIEW
『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル監督インタビュー

Q:アカデミー賞8部門受賞おめでとうございます。感想を聞かせてください。
受賞した瞬間を今でも思い起こします。たったの1400万ドルの予算でつくり、大スターも出ていないこの作品が、こんな成功を収められたんですからね。あらためて、感激してしまいます。全世界の映画祭で多くの賞を獲得し、興行的にも成功したのは、この映画のストーリーにこそ理由があるんです。主人公が一人のちいさな少年で、彼が自分の夢のために、絶え間なく努力をして、最後に大金をかちとる。でもお金よりもっと大切なのは彼が、彼の想う人を勝ち取ったこと。これは我々が住むこの世界のどこかで起こっている話だし、国や宗教にかかわらずみんなが共感する話だと思うんですよ。

Q:世界的な不況の時代に夢と希望を与える映画になったということですね。
世界不況の中厳しい局面の中、人々がその長い旅の後に希望を求めていたり、オバマ大統領が当選した事に見られるように変化を望んでいたり、より外のものに対するものにオープンになっていったりする傾向も影響している事ももちろんあると思います。要因の一つとしては、この映画のタイトルにもなっていますが、スラムドッグ(注*)、勝ちそうもない弱者が夢と強い決意を持ってすべてを乗り越えていき、逆境から学んだことが答えに結びついていくというのも人々を惹きつけているのだと思います。でも“なぜ”彼がこのクイズ番組に参加したのかは、ぜひ皆さんの目で確認してくださいね。
(注*:英語でいうとアンダードッグ。“スラムドッグ”という言葉は脚本家サイモン・ビューフォイの造語)

Q:この映画では、リアリズムとファンタジーの部分とどちらを描きたいと思いましたか?
まず前半はできる限りリアルに心がけたいと思いました。ムンバイのスラムの世界などは人も含めてよりリアリズムを徹底したく実際のスラムで撮影をしました。もう後半部分はおとぎ話のようなものを生みたかった。それはわれわれ皆が持っている夢はかなうんだと希望に響くものにしかったからです。そして最後まで待っていただくとボリウッドを象徴するような歌と踊りのすばらしいミュージカルの部分が生まれるというわけです。

Q:数々の受賞を含め、今これほど世界中で注目されていることに関してどう思いますか?
映画を製作したものとしては賞を受賞する前に映画自体は完成しているので、本当は、なんらか変わる事はないのです。唯一思うのは賞を受賞することによって世界中でこの映画が知られて、観てもらえる機会が増えたということに尽きます。それがうれしいですね。お金では買えないものですから。西洋の有名な俳優がいるわけではない、大きな製作予算があるわけではないこの映画が注目されたことは、大きな利益になると思いますね。

Q:イギリス人監督のあなたが、なぜインドでこの映画を作ったのでしょうか?
クイズショーという舞台をベースのストーリーを考えた場合、一番興味深く、そしていい場所がインドなんです。ムンバイの中のスラムいう土地は生命力が溢れ、そしてコミュニティが形成され、導いていて、日に日に進化をとげているんですよ! ゲームショーでもある「クイズ$ミリオネア」はまさに変化を遂げているインドを象徴するものなんです。冨と貧、まさにスラムドッグとミリオネアがぶつかり合わせてドラマティックなストーリーを生んでいるのがヴィカスが書いた原作なんです。そして僕がサイモンの脚本で一番好きなのは、この主人公ジャマールは、お金が目的ではなかったということなんだ! あっ言ってしまった(笑)。

Q:インドでの撮影は難しかったでしょうが、それ以外で、監督にとって何か違う独自性や困難はありましたか?
街ですね。街の恩恵を受けることです。挑んだり、コントロールしようとするべきではないんです。通常、映画監督はそうします。人生の瞬間をまとめあげ、それを映画で上手く動かそうとすします。でもそれは上手くいかないんです。ムンバイは、制御不能の街なんですよ。我々は街の波に乗ればいいだけでした。この街にはエネルギーの巨大な波があります、1日20時間続く波です。そこに入り込み、その中に浸り、それを少しだけ捉えるんです。台本どおりの統制された正確なシーンは得られないけれど、それを補って余りある生命力を得られるんですね。生きている感覚。あの街は命を称えています。死も暴力もたくさん存在しますが、生命力溢れる感覚に圧倒されます。だから我々がしようとしたことは、それを変えたり、コントロールしようとするより、むしろ、その生命力を捉えるために全力を尽くすことでした。

Q:無名の俳優を使っていて、しかも子供時代と大人を演じる俳優が違います。どんな難しさがありましたか?
いい俳優であり、少し似通っている人間を見つけるのは面白い試みでした。全く同じように見える必要はないんです。でも例えば数人の耳がとんがっている。青年役のデーヴの耳がそうで、少年役の中間のデネイの耳もとんがっていました。だから小さい子の耳を少し押し出しました。そういうことは試しましたね。だが人間の成長を映し出すのは難しかったですね。事実、彼らにはほとんど経験がないんです。でも、それがプラスになりました。彼らは映画作りの技術的なことは知らないけれど、それを補う新鮮さがある。気負いがない。彼らは映画出演に対して、とてもオープンで、エネルギッシュで熱心で純粋でした。そこが好きでしたね。私自身、できる限りそういう性質を維持しようとしています。ほとんど未経験で、どうしていいかわからない状態。そういう彼らとの仕事は楽しかったですよ。多くの俳優がもつ形や経験にとらわれない自由が私は好きなんですね。

Q:脚本家のサイモン・ビューフォイとの仕事はいかがでしたか?
最高です。彼は小説を見事に脚本化してくれました。素晴らしい構成のとても自由な映画脚本でした。小説の脚色ではなく、大部分が彼自身の作品になっていました。もちろん小説のアイデアを活かしていますけれども、我々は少しだけ一緒に脚本を作業し、いくつか変更しました。何度も一緒にインドを訪れ、彼のリサーチに目を通し、同時に私も理解を深めました。監督は脚本を引き継ぐのが仕事です。脚本家が家に戻り、監督がその脚本を引き継ぎ、そして彼に代わって映画を作る。彼の仕事は本当に好きでしたね。僕は方向性のある脚本が好きなんです。まるで建築家のように、設計図を描き、始まり、中盤、終わりを作り、そこにシーンを積み上げていく。建築するように積み重ねながら、しばらくするとどこに向かっていくかが見え始める。そういう脚本が好きですね。方向性がなくフワフワしているような、調子ばかりいい脚本は好きじゃないんです。方向性が見える脚本が好きですね。

Q:「スラムドッグ$ミリオネア」はどんな作品ですか? 最後にひとことメッセージを。
日本の皆さん、こんにちは! 私は『スラムドッグ$ミリオネア』の監督、ダニー・ボイルです。この映画の舞台はインドのムンバイです。この町にあるインド最大のスラム街出身の少年が世界最大のクイズショー「クイズ$ミリオネア」に勝ち進んでいくお話です。どうやって彼は答えを知りえたのか? それはこの映画の中核になる部分なんですが、彼の人生の沢山の経験が、クイズショーで出される質問の答えに繋がっているんですよ。そして、“なぜ”彼は答えを見つけ出したのか? それはあなた自身で確かめて欲しいです! ぜひ劇場で本作を観てください!

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