第81回アカデミー賞最多8部門受賞!世界が注目する感動作『スラムドッグ・ミリオネア』
第66回ゴールデン・グローブ賞、第81回アカデミー賞ほか、映画賞レースを総なめ!『トレインスポッティング』監督ダニー・ボイル×『フル・モンティ』脚本家サイモン・ビューフォイの鬼才コンビが放つ、爆発しそうなエネルギーと生命力に満ち溢れた“スラムドッグ(スラムの負け犬)”の物語。
インド中の人々が今、テレビに釘付けになっている。大人気番組「クイズ$ミリオネア」が、番組の歴史上最高にエキサイティングな瞬間を迎えているのだ。挑戦者はムンバイのスラム出身の18歳、ジャマール・マリク(デーヴ・パテル)。学校に行ったこともない彼は次々に難解な質問に正解を出し続け、あと1問で2000万ルピーを手にするところまで来ているのだ。いまだかつて医者も弁護士も、ここまで勝ち残ったことはない。このなりゆきをおもしろく思わない番組ホストのプレーム・クマール(アニル・カプール)はこっそりと警察に連絡し、1日目の収録が終了したところでジャマールを逮捕させてしまった。どんなずるい手段を使ったのかと尋問され、拷問を受けるジャマール。単に本当に答えを知っていただけだと主張する彼は、これまでに出された質問ひとつひとつについて、その答えを知ることになった過酷な過去を話し始めた。ジャマールと兄のサリーム(マドゥル・ミッタル)は、幼いころ目の前で母を亡くし孤児になった。ある日、ふたりは、ひとりぽつんと立っている女の子を発見する。放っておけという兄の言葉に逆らって、ラティカという名のその孤児の女の子を自分たちの仲間に招き入れてあげるジャマール。3人は、自分たちを“三銃士”と見立てて、想像を絶する究極に残酷な少年時代を手を取り合って生き抜く。しかし、孤児たちを搾取する恐ろしい大人たちの元から逃げ出す途中で、ラティカと兄弟は生き別れとなってしまう。兄弟ふたりとなったジャマールとサリームは、電車の乗客から盗みを働いたり、観光ガイドのフリをして金を稼いだりして生き延びていた。どんな苦労にさらされながらも、まっすぐな心と誠実さを失わないジャマールと対象的に、サリームは金と力に貪欲になり、兄弟の溝は深まっていく。そんなジャマールの心の支えとなってくれたのは、今はどこに住むのかもわからない、幼なじみのラティカ(フリーダ・ピント)だった……。
製作国はイギリス、舞台はインド、メインキャストはまったくの無名、アメリカ資本が入っていない、にも関わらず、本年度の映画賞を席巻し、話題騒然となっている今年“最高”の一本。それがこの『スラムドッグ$ミリオネア』だ。映画界最大の祭典アカデミー賞では作品賞含む最多8部門受賞、アカデミー賞の前哨戦とされるゴールデン・グローブ賞でも作品賞(ドラマ部門)含む最多4部門受賞ほか、延べ85の映画賞を総なめにした。アカデミー賞において、ハリウッド映画以外での作品賞受賞は1988年の『ラストエンペラー』(イタリア/イギリス/中国合作)以来実に21年ぶりの快挙だという。物語は、スラム育ちで無学の青年が、絶大な人気を誇るクイズショー「クイズ$ミリオネア」に出演し、奇跡的に番組史上最高額の賞金をかけた最終問題にまで勝ち進むというもの。「クイズ$ミリオネア」と言えば、日本でも司会のみのもんたが解答者に決断を迫る決めぜりふ「ファイナルアンサー?」でお馴染みの高視聴率番組だが、本作での司会者クマールは憎らしいほどに意地が悪い。ジャマールの生い立ちを揶揄し、彼が勝ち上がることを歓迎しない。それでもジャマールが必死にクイズに挑み続ける理由、正解を出し続ける理由とは? それは、番組のスタジオ、警察での尋問、ジャマールの回想の3つのシーンが交差することで自然と明らかになっていく。壮絶な経験をクイズにリンクさせたストーリー展開、観る者を混乱させないスマートな構成でテンポ良く見せる演出など、どこを取っても申し分なく巧い。
インド生まれの作家ヴィカス・スワラップによる小説「ぼくと1ルピーの神様」を元に、スリルと愛、残酷さとユーモア、そして共鳴と感動に溢れる『スラムドッグ$ミリオネア』の脚本を手掛けたのは、『フル・モンティ』でオスカー候補に挙がったサイモン・ビューフォイ。監督は『トレインスポッティング』『ザ・ビーチ』『28日後...』など毎回まったく違ったジャンルの作品を贈り出してきた個性派のダニー・ボイル。インドの持つエネルギーをスクリーンに反映させたいと願ったボイルは、出演者の多くを現地のスラムでスカウト。リアリティを重視して、言語も全体の3分の1をヒンディー語で撮影した。また、作曲には、インドの映画音楽を100曲以上作曲し、「ボリウッドのジョン・ウィリアムズ」とも呼ばれるA・R・ラフマーンを起用。その結果、まさに“今”のインドの躍動感と独特のエッジに満ちた、エキゾチックかつパワフルな映像が誕生することになった。本作が単なるドラマチックな夢物語に終始していないのは、善も悪も、美も醜も、楽も苦も、相反するもの同士が同居する混沌とした世界の爆発しそうな熱気を、まざまざとフィルムに焼き付けているからだ。いわゆるヒーロー像とはかけ離れた非力な青年が、想像を絶する過酷な人生の中で失うことのなかったひたむきさ、逞しさ、諦めない強さは、劇中のインド民衆だけでなく、この映画を観るすべての人に力強い希望の光を与えてくれる。
ダニー・ボイル監督 アカデミー賞受賞後の特別インタビューはこちら!
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