クラシックとポップスが融合した“クラシカル・クロスオーバー”。そのジャンルから新星と呼ぶにふさわしい大瀧賢一郎が誕生した。クラシックやオペラ、多くのコーラスワークなどでキャリアを積んだ彼が新たに挑戦する世界について、お話を聞いた。
■“クラシカル・クロスオーバー”は最近、注目されている新しいジャンルですよね。
大瀧
:ヘビメタやテクノみたいにサウンドがイメージできるものではなく“異種格闘技”みたいなものですね。海外で言うとサラ・ブライトマンやアンドレア・ボチェッリ、国内だと大学時代の仲間でもある秋川雅史ですね。日本ではまだまだ開拓の余地のあるジャンルだと思っています。
■長年、クラシックやオペラの世界で活躍されていた大瀧さんが、なぜ新しい世界に?
大瀧
:大学在学中から、20年間、いろんな現場で仕事をさせて頂いて、多くのジャンルの方と、仕事をできる喜びを感じていましたが、誰かのために歌おうという気持ちはまだ芽生えていませんでした。そうしている時に、イタリア時代にお世話になった先生が危篤と知り、再会した時その方に「ケン、貴方は何をするにも人より10年遅れているから、人より10年あとまで人の為に歌いなさい」と言われて、歌手としての使命に気がついた気がしました。
■デビュー・ミニアルバム『Maria mia』では、日本語とイタリア語の曲を歌われてますが、自然な流れで聴くことができ、言語の壁のなさを感じました。
大瀧 :僕は洋楽オンリーのMTV世代なんで、高校生の頃は、デュランデュランを空耳で歌ったり、コピーバンドばっかりやってましたよ。今も言葉の垣根は僕の中にはありませんね。「音楽というのは上下もないし、国境もないし、強いもの弱いものもない」と仲間とよく話すんです。
■曲作りやアレンジにも力が入っていたとお伺いしましたが。
大瀧
:すべての曲にオリジナルのモチーフがあるんですが、曲によって、私なりに脚色したり、違う詞をつけさせて頂いたりしました。
■アレンジを加えたのはなぜ?
大瀧
:食事に例えると、どこの国の料理かわからないもの、味も想像できないものは、食べるのに勇気が必要ですよね。音楽も同じで、クラシックが苦手な方でも、本当は口ずさめるメロディーが多いんです。栄養士さんが多くの栄養を摂取してもらいたいと考えるように、音楽家も、ロックもポップスもクラシックも、どんどん吸収して欲しいと思っていますので、そういった意味で、導入の一因になれればよいな、と。
■なるほど。 本当にいろいろな顔を持った曲が入っていて「クラシックもこういうことができる」と、主張されてるように感じました。今後はどのような曲に挑戦されたいですか?
大瀧
:最もこだわりたいのは、ラブソングです。大人の夫婦がタイムスリップできるような名曲を掘り起こしたり、オリジナルでも素晴らしい曲を歌いたいですね。自分と同じ世代がスッと「いいじゃない」と思うようなアーティストになりたいです。
■読者へメッセージをお願いします
大瀧:余裕のない時代の中で音楽を嗜好する方っていうのは、人間らしく生きるということや、音楽からもらったエネルギーを、他の人達に分けてあげる大切さを、知っていらっしゃる方々だと思うんです。ですから、音楽はジャンル問わず、人間のためのビタミンなので、すべてのジャンルの音楽を応援して下さい。
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