インタビュー一覧

New Can Magazine
最新 New Can Magazine
設置店舗一覧

Link
CANSYSTEM
CAN-TOWN
mammySino

FEATURE
希代のシンガーが日本のすべてのお母さんに贈る名盤登場

mammySino祈りにも似た歌声と確かな表現力を持つシンガーmammySino。昨年のデビュー以来、彼女の歌世界はゆっくりと、しかし確実にシーンに浸透している。古今東西の名曲を瑞々しい感性で解釈したファースト・アルバム『ココロノウタ』、ライブのセットで歌われているレパートリーとしてオリジナルを中心に編まれたスペシャルエディット・サプライズ盤『mother Voice』という懐の深さを感じさせる2作品をリリースの後、いくつかのライブも行われた。アコースティックでリラクシンなライブでのパフォーマンスは、神秘的なイメージさえあったこれまでの彼女のイメージに、親しみやすさをアピールしたのではないだろうか。
 そしてこのたびリリースされるニューアルバム『下北むつの子守歌』。昔から伝承され、歌い継がれてきた楽曲とオリジナルにより、日本人の源泉、そして童歌(わらべうた)そして子守歌をテーマに制作。日本のポピュラー・ミュージック界に多くの名盤を残すベテラン・プロデューサー樫原伸彦とともに、約1年の歳月をかけ制作が行われた。
 オープニングを飾るのは、誰もが知る童謡「しゃぼん玉」。アカペラで歌われるこの曲は大正の時代から親しまれてきた曲だが、作詞を手がけた野口雨情の亡くなった娘への思いと、多くの子供たちのつつがなさへの希求がそのしゃぼん玉と戯れる情景の奥には隠されている曲であることが知られている。そして「母の想ひ」は、樫原の作曲によるオリジナル。ピアノとストリングス四重奏をバックにしたmammySinoのリリックは小さい我が子へと語りかける優しいタッチが印象深く、細やかなヴォーカルの表現により、母の万感がしっかりと伝わってくる。最初のこの2曲の流れは息を呑むほどの美しさをたたえており、その母たる存在の感情という点で、連作のような聴きごたえをもって迫ってくる。
 「里の秋」は太平洋戦争勃発時に書かれ、終戦後復員兵を迎えるための歌として完成した楽曲。子供の家族へのいたわり、そして父の無事を祈る歌詞。樫原のピアノとともに、栗や木の実といった深まる秋の季節感を感じさせる風景と、親と子のドラマをここでmammySinoは決して大袈裟にすることなく、抑制されたムードとなにげない生活感により描いている。
 アルバム・タイトル曲であるオリジナル曲「下北むつの子守歌」は、尺八を用いた和の風情と、空間的なプロダクションが駆使され、彼女が在住する下北半島の厳しくそして粛然とした雰囲気を持つ美しい自然が浮かんでくる、今作のハイライトとも言えるナンバーだ。
 そして「うちへ帰ろう」は、樫原が手がけた双子のデュオFLIPFLAPの98年リリースの楽曲のカバー。ノスタルジックな感情をかきたてられ、ある意味現在の〈なごみ系〉音楽の先駈けとも言える90年代屈指の名バラードを、mammySinoは10年の時を経て新たに甦らせている。スケールの大きなアレンジメントが、日常感と超自然的な風景の双方を喚起させることに成功している。
 ギター、パーカッションにマンドリン、マンドラを加えた編成による「竹田の子守唄」。京都地方に伝わる民謡をルーツに、フォーク・グループ赤い鳥が71年にリリースした昭和を代表するヒット曲。しかしながら「ヨイトマケの唄」などと同じくいわゆる「放送禁止歌」としてその後エアプレイがされることのなかった知られざる名曲だ。発表以来多くのフォーク歌手によりカバーされ、近年でもSOUL FLOWER UNIONや元LOVE TAMBOURINESによるGirl It's UといったJ-POP/ロックのアーティストも取り上げるこの歴史的な楽曲。赤ん坊をおぶり、あやしながら幸せを願う歌詞が、人間の根源的なところに訴えかける世界を、彼女は素晴らしい歌唱で解釈している。
 このように今作は童歌そして子守歌の持つ普遍性、日本人のベーシックなところに流れるつつましさと思いやりの精神、そしていつの時代にもある母が子供を思う気持ち、さらにはその楽曲が持つバックグラウンドに至るまでイマジネーションを広げることができる。童謡よりもさらにゆったりとしたテンポの童歌や子守歌は、それ自体が独特のヒーリングやリラクゼーション効果があるが、優れた音楽というのは、人を楽しませたりくつろげたりすることができると同時に、忘れかけていた感情をよみがえらせることができる。mammySinoがじっくりと取り組んだ今作にある説得力は、スピード感と即効性だけが要求される現在のシーンに対する静かなカウンターであり、あふれる包容力とイノセントは、この時代の音楽にきっと必要な成分なのだと思う。
 これからも彼女は、自らのペースで、自然の溢れる下北半島から、おおらかな歌を届けてくれるに違いない。母親としてのたくましさ、全てを許す視線、受け入れた上での強さ。『下北むつの子守歌』はそうした内面を持って、自ら母親であるmammySinoが、子供たちを世に送り出したお母様、現在育児に励んでいる方、そしていずれ母親となる若い世代に至るまで、すべてのお母さんに捧げたアルバムなのだ。

Text:駒井憲嗣
RELEASE
mammySino 『下北むつの子守歌』mammySino 『下北むつの子守歌』
AFCA-042 ¥2,000(税込)
Aaronfield 発売中
1.しゃぼん玉
2.母の想ひ
3.里の秋
4.下北むつの子守歌
5.うちへ帰ろう
6.竹田の子守唄
PROFILE
mammySino(まみーしの)
1982年11月2日生まれ、25歳。青森県下北半島在住の女性シンガー。18歳で進学の為上京し移り住んだ場所、千葉駅前のストリートで独り歌い始め、21歳でCDリリースのきっかけをつかむ。別名義で過去2枚のシングルCDを発表後、出産の為、活動を一時中断。地元青森県むつで育児に専念する傍ら1年のブランクを経て、レーベルをSpinnaB-ill、Caravan等を輩出したインディーズ、Aaronfieldに移し活動再開。ネイティブに通ずる英語曲を中心に歌い広げるその世界観と抜群の歌唱力は、それを聴くものの心を捉えて離さず、感動を与えてくれる。洋楽スタンダード・ナンバーのカバーアルバム『ココロノウタ』を2007年6月発売。同年9月、ライヴ・レパートリーにも含まれている過去名義の既発音源を編集した『mother Voice』発売。「和心」と「童歌」をコンセプトとしたニューアルバム『下北むつの子守歌』を5月14日に発売した。

公式サイト
http://www.mammysino.com
有線放送の各種番組表 | 個人情報の保護について | お問い合わせ
(c) Copyright 2006 CANSYSTEM. Co.,ltd. All Right Reserved.
pick up! movie blog chart interview news home Music Lounge