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高橋真梨子 高橋真梨子

高橋真梨子の歌の魅力とは何か。ある人は、せつない恋の歌に共感するといい、ある人は声の色気に誘われるという。優しさだという人もいる。そして突き詰めて考えてみれば、彼女の歌には、そのすべてがバランスよく融合していることに気が付く。その飾らない美しさと、垣間見えるファンへの想いの深さも長く愛される理由だ。
 彼女が2代目ヴォーカリストをつとめたペドロ&カプリシャスを経て、ソロ・デビューした1978年から今に至るまでにリリースしたアルバムは28枚。30年近いソロとしてのキャリアの中で、およそ1年に1枚のペースでアルバムをリリースしている計算になる。その中で、「桃色吐息」「はがゆい唇」「ごめんね…」など、時代を飾る多くの名曲を生み出してきた。同時に、ほぼ毎年コンサートも欠かすことがない。いや、むしろリスナーにダイレクトに歌を聴いてもらえるその空間を、彼女は大切に、精力的に行なってきた。今や彼女のコンサートチケットは、いつだって入手困難となっている。その一方で、本人の意思なのだろう、テレビの露出は多くなく、それでも同年代の女性から若い男性に至るまで、彼女の歌に出会った者は皆その深い魅力に惹きつけられ、ファンは増え続ける一方である。稀代のシンガー、高橋真梨子の歌への姿勢には、“職人”の気質すら感じられる。
 その魅力の、一番美味しいところを詰め込んだ一枚を紹介しよう。2007年9月に発売した、高橋真梨子初企画“全国のファンが選んだリクエスト・ベスト集”『Stories〜All Songs Requests〜』が大ヒットを記録している。投票によって選ばれた曲目は、押しも押されぬ名曲ぞろい。ファンの熱い要望に応えて、CDの容量限界まで詰め込んだ楽曲は16曲。そのすべてに共通するのは、大人の深い恋愛の心情である。私的なまでに掘り下げた恋愛模様から、明るいメロディがより切なさを醸す幻想的、物語的な詞世界まで、それぞれが強い個性を放っている。芯にあるものは同じであっても、その一つ一つの歌に込められた想いは異なり、彼女の卓越した表現力が決して似たものなどにはしないのだ。彼女が“バラードの女王”と呼ばれ続ける、その理由を感じることができる一枚である。
 さらに彼女の近年の大人気楽曲であり、先述のリクエストでも12位を獲得し、リクエスト・ベスト集に収録された「オレンヂ」がシングルとして新たにリリースされた。ままならない愛しさと、そこに付随するせつなさを歌い上げる、コンサートでも人気の高いロック・ナンバーが、アレンジ、レコーディングも新たに「オレンジ(SINGLE VERSION)」として生まれ変わった。〈貴方の心のドア 叩き続けてる 切ない 気を引きたい 逢いたい〉と、空をさまようような儚い願い。高橋自身が筆を取ったその歌詞は、物語性を帯びながらも具体的ではない。長い物語のいくつかの断片を切り取ったような抽象的な言葉の並びは、聴くものの想像をかきたて、また、ひとつの詩として言葉の美しさに溢れている。
 何より、その歌詞を極限まで高める彼女の歌声に圧倒される。プロデューサーのヘンリー広瀬をはじめとするその熱い演奏、その厚いサウンドに見合う存在感ある歌声。そしてテンポの速い曲であっても、一語一句を丁寧に発語するそのスタイルは説得力があり、歌詞の魅力を余すことなく伝えてくれる。
 また、今作のカップリング曲となる「コバルトの海」は、2007年のツアー“優美彩唱”で初披露され、ファンの間からリリースを待ち望まれていた名曲である。上手くいかない恋の苦しみに、「なぜ、人はこんなにも報われない愛しさを募らせ、そしてせつなさを抱えてしまうのか」という問いに突き当たった経験を持つ人は多いことと思う。願わくばこの悲しみから抜け出し、希望へと進んでいきたいという気持ちを情感豊かに歌い上げる、珠玉のバラードである。しっとりとした曲調でありながら、彼女独特の高音域でしなやかに伸びる声の魔力と、張り上げずとも迫力に溢れる歌唱力の前に、聴く者は瞬時に耳を奪われる。それでいて表現は大げさにならず、いたって自然に歌い上げるバランス感覚は、彼女の特徴のひとつと言える。そのバランス感覚があるからこそ、彼女の曲にしばしば登場する官能的な歌詞においても、いやらしさを感じさせずに艶だけを贅沢に伝えてくれる。しっとりとしたバラードも、ロック、ポップスにおいても、彼女の詞世界に共通する芯は、決してぶれることがない。豊かな表現力が、それぞれの楽曲の色味を鮮やかに彩るのだ。
 そして、彼女の曲のすべてに共通して感じる、もうひとつのキーワードがある。それは、「優しさ」だ。悲しみの歌を、共感できるよう悲しく歌うシンガーはたくさんいる。しかし彼女には、時に狂おしいほどの想いを歌いながら、その声に“希望”が見え隠れする。それは、高橋自身の人間性によるものか、あるいは、自らが歌うせつなさ、悲しみを乗り越える力強さが、彼女の歌声に備わっているからなのか。おそらくは、その両方であろう。事実、彼女が歌を弱々しく歌うことはない。いつだって、その声は力強く、凛としている。いくら悲しい歌を歌おうとも、その歌声に救いがある。おそらく、そのようなシンガーは高橋真梨子をおいて他にない。だからこそ、多くのファンが長きに渡って彼女を支持するのだろう。
Text:吉田大悟
RELEASE
『オレンヂ(SINGLE VERSION)』『オレンヂ(SINGLE VERSION)』
VICL-36367 ¥1,260(税込)
ビクターエンタテインメント 発売中
1.オレンヂ(SINGLE VERSION)
2.コバルトの海
3.オレンヂ(SINGLE VERSION)〈Instrumental〉
4.コバルトの海〈Instrumental〉

『Stories 〜All Songs Requests〜』初のリクエスト・ベスト集CD
『Stories 〜All Songs Requests〜』

VICL-62504〜5(2CD) ¥3,300(税込)
ビクターエンタテインメント 発売中
01.for you…
02.ごめんね…
03.グランパ
04.はがゆい唇
05.淡き恋人
06.桃色吐息
07.ジュン
08.五番街のマリーへ
09.あなたの空を翔びたい
10.万華鏡〜without you
11.遥かな人へ
12.オレンヂ
13.フレンズ
14.ヒ・ラ・ヒ・ラ淫ら
15.Heart Breaker -波紋の渦-
16.ラスト・メール
PROFILE
高橋真梨子(たかはしまりこ)
福岡県出身。ジャズ・プレイヤーだった父の影響で14歳からジャズの勉強を始める。本格的なレッスンを受けるため16歳で上京。ジャズピアニスト柴田泰氏に師事し、歌を学ぶ。1972年、ペドロ&カブリシャスの2代目ヴォーカリストとしてデビュー。「ジョニィへの伝言」「五番街のマリー」などが大ヒット。1978年、「あなたの空を翔びたい」でソロデビュー。以降、今に至るまで、ほぼ毎年アルバムをリリース。一方、ライブ活動を大切にし、海外公演(1993年ニューヨーク・カーネギーホール等)を含め、毎年、精力的にコンサートツアーを行なっている。モットーは「何事も自然流、無理をせず現在にベストを尽くす」
http://www.the-musix.com/mariko/
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